以前、膝の半月板に関する解剖・運動学的知識をまとめました。
今回はそのような膝半月板について、病変の有無を確認するために用いられるスペシャルテストについて解説していきます。
半月板損傷に対するスペシャルテストは何があるか?
半月板損傷に対するテストとして最も有名なのはApley(アプレー)とMcMurray(マクマレー)だと思われますが、実際にはそれ以外にも多くのテストがあるとされます。
例えばMagee, Manskeによる“Orthopedic physical assessment”では、’For meniscus lesions’のテストとして9つ挙げられています。
とは言っても実際にはそれら全て使いこなせるようになるというのは現実的ではないし必要ないと思います。最終的には診断は画像に基づいて医師によって行われるので、現場では医師へのreferが必要かどうかを確かめられれば良いので。
また、メディカルチームとして働く上ではマイナーなスペシャルテストを実施してもそれが他トレーナーと共有できないというのもあるので、その意味でもいわば「王道な」テストを実施するのが良いでしょう。
このページではそのような視点に立って、特に王道(そして精度に関する研究が多い)テストである、
- Apley test
- McMurray test
- Thessaly test
- Joint line tenderness
の4つについて見ていこうと思います。
Apley test (アプレーテスト)
手順
被験者は腹臥位とし、膝を90度屈曲させて大腿部が動かないように固定します。
このポジションから、以下の2つのプロセスを踏みます。
- Distraction test (牽引テスト)
下腿を被験者の背側方向に(つまり天井に向かって)引っ張って牽引をかけながら、下腿を内外旋する。
(内外果(量くるぶし)の少し上方(ベッドに近い方)を両手で把持して引っ張る) - Compression test (圧迫テスト)
下腿をベッドの方へ押し込みながら下腿を内外旋する。
(片方の手を踵に置いてその手で圧迫をかけながら、もう片方の手を両果のやや上方を把持して回旋を入れると良いです。踵に置いた手で回旋を入れると足関節・足部の回旋が入ってしまい、下腿の回旋が上手く入らないと思います)
基本的にApleyはまずdistraction、次にcompressionの順で実施すべきであるとされます(Magee & Manske, 2021)。
解釈
このテストの有用な点は、2つのテストの結果によって膝部の何の病変が疑われるかを分けて推察することができるということにあります。
つまり、牽引+回旋で症状誘発される場合は伸張性組織(靭帯や関節包など)の病変が疑われ、圧迫+回旋で症状誘発される場合に半月板の損傷を疑う、ということです。
検査精度
その他のテストに比べてApley testの精度に関する報告は少なく、Hegedusらのメタ分析では感度61%、特異度70%と報告しています(Hegedus et al., 2007)。
尤度比については報告としては記載されていませんが、この結果からすると陽性尤度比は約2.03、陰性尤度比は約0.56になります。
少なくともこの数値的にはあまり有用なテストとは言えないですね。。
Blythらは、primary care cliniciansによって行われた場合とmusculoskeletal specialistによって行われた場合のそれぞれで精度を報告しています(Blyth et al., 2015)。
| 精度 | PC | MSK |
| 感度 | 0.53 (0.44-0.62) | 0.43 (0.34-0.52) |
| 特異度 | 0.53 (0.42-0.63) | 0.72 (0.61-0.80) |
| +LR | 1.12 (0.85-1.46) | 1.52 (1.04-2.21) |
| -LR | 0.90 (0.69-1.17) | 0.80 (0.65-0.97) |
専門医によって行われた場合にはやはりある程度精度は上がるようですが、それでも臨床的に意義のある結果が得られるとは言いがたいですね、、
McMurray test(マクマレーテスト)
手順
被験者は仰臥位とし、そこから他動的に膝を最大屈曲位に動かします。
そのポジションから下腿を内旋/外旋させ、そのまま膝を伸展させた時にスナッピングやクリック、疼痛が生じるかどうかを確認します。
上記の症状が見られた場合はテスト陽性とします。
解釈
このテストは主に半月板の後部〜中央にかけての病変を検査することができるとされます。
下腿外旋位からの膝伸展では内側半月板を、内旋位からの膝伸展では外側半月板を見ることができるとされることが多いですが(Rath & Richmond, 2000; Chivers et al., 2009)、逆の結果を指摘しているものもあります(Kim et al., 1996)。
Kimらはこの「回旋と同側の異常所見を呈する」ものをparadoxical McMurray testとして、いくつかの損傷パターンで見られることを指摘し(Kim et al., 1996)、これらのパターンに対してparadoxical McMurray testは高い特異度をもつとも指摘しています(Kim et al., 2012)。

図はKim et al. (2012)より。
おそらく下腿の回旋方向と病変の部位に関しては相反する結果が得られることもあると思います。
とは言っても、少なくともこの段階では半月板に問題があるかどうかの疑いを立てられれば良いので、そこまでどちらの方向で陽性になるかということを必要以上に考えることは無いのではないかとも思います。
検査精度
McMurray testの精度について、Hegedusらはそれ以前のメタ分析において感度は52~71%、特異度は59~97%であったと報告しています(Hegedus et al., 2007)。
また、Smithらのメタ分析では感度61%[95%CI: 45-74]、特異度84%[69-92]、陽性尤度比3.2[1.7~5.9]、陰性尤度比0.52[0.34~0.81]と報告されています(Smith et al., 2015)。
Apleyよりは検査精度は良いかもしれないですが、それでもこのテストで半月板損傷の検査後確率を高めるのは厳しいですね。。
Thessaly test(テッサリーテスト)
手順
患者は裸足で患側一側で立位をとります。検者はその間患者の手を持ち、バランスを取れるようにします。
その後患者は膝を5°/20°屈曲位にし、そこから大腿骨を内旋させるように動かします。
健側5°、患側5°、健側20°、患側20°の順に行います。
患者が関節線上の不快感やロッキング感などを訴えた場合、テスト陽性とします。
検査精度
Smithらによるメタ分析では、20°屈曲位でのThessaly testの精度は感度75%[53-89]、特異度87%[65-96]、陽性尤度比5.6[1.5-21.0]、陰性尤度比0.28[0.11-0.71]と報告しています(Smith et al., 2015)。
ただしこの報告は異質性がかなり高いため、解釈は注意すべきかと思われます。
Goossensらは、20°屈曲位でのThessaly test単独およびMcMurray testと組み合わせた際の検査精度を報告していますが、少なくともこれらの結果はThessaly testの有用性に疑問を呈するものでした(Goossens et al., 2015)。
Joint line tenderness(関節線上の圧痛)
この検査は最もシンプルで、膝の関節線joint lineを触察した際に疼痛が生じるかどうかを確認するものです。
膝90度屈曲位で触察しますが、このときに下腿を内旋位にすると内側半月が、外旋位にすると外側半月が触知しやすくなります。
検査精度については、Smithらのメタ分析では感度83%[73-90]、特異度83%[61-94]、陽性尤度比4.0[2.1-7.5]、陰性尤度比0.23[0.12-0.44]であると報告されています(Smith et al., 2015)。
まとめ〜スペシャルテストだけで判断するのは難しい〜
結論としては、半月板損傷の有無をスペシャルテストのみで判断するのは難しいと思われます。
したがって、(当たり前の話ではありますが)スペシャルテストに加えて臨床症状や徴候を確認することが必要になるでしょう。
【半月損傷における典型的な症状・徴候】
*Magee & Manske (2021)より
関節線上の疼痛
屈曲可動域制限(>10度)
伸展可動域制限(>5度)
腫脹
crepitus(摩擦、きしみ音)
(スペシャルテストでの陽性所見)
①靭帯損傷の可能性が否定的であり、②上記のような所見が見られた場合は、半月板損傷の可能性があるとして医師へreferするのが良いかと思います。
(とは言っても、結局靱帯損傷の可能性があればそれもまた医師へreferして良いかと思いますが、、)
余談ですが、MRIの精度に関して、例えばPhelanらは内側半月に対しては感度0.89[0.83-0.94]、特異度0.88[0.82-0.93]であり、外側半月に対しては感度0.78[0.66-0.87]、特異度0.95[0.91-0.97]と報告しています(Phelan et al., 2016)。
同研究ではそれ以前のメタ分析での報告も併記しており、それによれば内側半月に対する感度は約90%、特異度は約85%前後であり、外側半月に対しては感度75%程度、特異度95%程度であるようです。
References
- Blyth M, Anthony I, Francq B, et al. Diagnostic accuracy of the Thessaly test, standardised clinical history and other clinical examination tests (Apley’s, McMurray’s and joint line tenderness) for meniscal tears in comparison with magnetic resonance imaging diagnosis. Health Technol Assess. 2015;19(62):1-62. doi:10.3310/hta19620
- Chivers MD, Howitt SD. Anatomy and physical examination of the knee menisci: a narrative review of the orthopedic literature. J Can Chiropr Assoc. 2009;53(4):319-333.
- Goossens P, Keijsers E, van Geenen RJ, et al. Validity of the Thessaly test in evaluating meniscal tears compared with arthroscopy: a diagnostic accuracy study. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(1):18-B1. doi:10.2519/jospt.2015.5215
- Hegedus EJ, Cook C, Hasselblad V, Goode A, McCrory DC. Physical examination tests for assessing a torn meniscus in the knee: a systematic review with meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37(9):541-550. doi:10.2519/jospt.2007.2560
- Kim SJ, Min BH, Han DY. Paradoxical phenomena of the McMurray test. An arthroscopic investigation. Am J Sports Med. 1996;24(1):83-87. doi:10.1177/036354659602400115
- Kim SJ, Hwang BY, Choi DH, Mei Y. The paradoxical McMurray test for the detection of meniscal tears: an arthroscopic study of mechanisms, types, and accuracy. J Bone Joint Surg Am. 2012;94(16):e1181-e1187. doi:10.2106/JBJS.K.00356
- Magee DJ, Manske RC. Orthopedic physical assessment. 7th eds. Elsevier;2021
- Phelan N, Rowland P, Galvin R, O’Byrne JM. A systematic review and meta-analysis of the diagnostic accuracy of MRI for suspected ACL and meniscal tears of the knee. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016;24(5):1525-1539. doi:10.1007/s00167-015-3861-8
- Rath E, Richmond JC. The menisci: basic science and advances in treatment. Br J Sports Med. 2000;34(4):252-257. doi:10.1136/bjsm.34.4.252
- Smith BE, Thacker D, Crewesmith A, Hall M. Special tests for assessing meniscal tears within the knee: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Med. 2015;20(3):88-97. doi:10.1136/ebmed-2014-110160





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