今回のサムネもAIで作りました。なんかBluetoothみたいな信号出てるのおもろい。
中高生のスポーツに携わっていると、そこそこの頻度で出会うのが腰椎分離症ですよね。
青少年アスリートにおける腰痛症例は非特異的なものが34%、次いで腰椎分離症で28%だった、という報告1もあるように、割と結構な頻度で遭遇します。
頻度が高いからイージーな問題かと言うと全くそうではなく、個人的にこの障害は結構タチの悪いものという印象です。
というか、指導者にとっても選手本人にとっても非常ーーーーーに強い忍耐が必要になる疾患だなあという印象なんですよね。
全体として、青少年の腰椎分離症においては3ヶ月(12週間)が一つの時間的ポイントになると考えられています。
例えばAndrasとSkaggsによって提案されているアルゴリズムでは、
- 発症から3ヶ月以内の急性パターンであれば、骨癒合を目指した保存療法(安静、装具療法など)から始める
- 発症から3ヶ月以上経過している損傷であれば、症状に対して対症療法的に介入を進める
といった形で分けられています2。
El Rassiらによる研究では、腰椎分離症と診断された若年者(7~18歳)132人を対象に、そのうち全てのスポーツを少なくとも3ヶ月中止した86人では、スポーツ休止期間が3ヶ月未満だった46人に比べて16.39倍「優れた(excellent)」*回復をもたらす傾向にあった、としています3。
*ここでのアウトカムは様々な身体活動中の疼痛とスポーツ参加のレベルであり、「優れた(excellent)」とは高強度の身体活動中に疼痛はなく、また受傷以前のレベルに戻れたことを意味します。
ただ、軽々しく3ヶ月と言うものの、10代前後の子たちにとっての3ヶ月がどの程度の価値があるのか、という点については考えておく必要があるのかなーとも思います。
もちろん、3ヶ月しっかり休めば良くなる傾向はあるかもしれないですが、じゃあその3ヶ月の中止がその子にとって心理社会的にどのようなインパクトをもたらしうるか、という点については常に気にしていなければいけないんだと思います。

LIPUSが競技復帰までの期間を短縮する?
腰椎分離症のマネジメントは基本的に保存療法で、その中でもリハビリテーションは大きな意義を持ちます。
仮に3ヶ月のスポーツ休止を指示するにせよ、理学療法の開始時期を10週目以降にするよりもそれより前にした方が活動への復帰に要する日数が短縮されることが示されています4。
一般的には運動療法や装具療法、患者教育がメインにはなりますが、それ以外にも理論的背景からLIPUSも潜在的に有用であると考えることができます。
LIPUSとは「低出力パルス超音波」low-intensity pulsed ultrasoundのことで、骨折に伴って生じる生理学的な修復プロセスを促進させるとともに、超音波による微弱な機械的刺激が骨形成に関与する細胞を刺激し、結果として骨癒合が促進されると考えられています5,6。
若年者の腰椎分離症の本態はpars interarticularisにおける疲労骨折なので、骨癒合を促進するようなLIPUSは腰椎分離症の治療において有効なのでは?と考えるのは少なくとも理論的背景からは妥当であるといえます。
これについて、例えばTsukadaら7は、
P
早期腰椎分離症(pars interarticularisのMRIでの輝度変化のみを認める段階)の患者82人を対象に、
I
従来の保存療法(TLSOの装用とスポーツ活動参加の修正、運動療法)にLIPUS(1.5MHz, 30mW/cm2、20分を少なくとも週3回)を加えた35人と、
C
従来の保存療法のみの47人で、
O
競技復帰許可までに要する時間(これはT2WIでの輝度変化消失とX線上での分離所見が認められないことをクライテリアとしました)に差があるか?
を検討しています。
それによれば、
- 治療のエンドポイント(上述の画像所見上のクライテリアを満たしたタイミング)までの中央値は、LIPUS群で61日、対照群で167日だった
- 90日時点で、LIPUS群では65.7%が回復したのに対して、対照群では12.8%であった
- また、介入の脱落率もLIPUS群で有意に低かった(8.6% vs. 42.6%)
ことが示されています。
つまり、LIPUSの併用によって競技復帰までの期間が短縮されるのでは?ということですね。

この研究は後ろ向き研究であるため少なからず選択バイアスがあるとは言えますが、しかしこの結果はLIPUSの併用に潜在的な利点があることを支持する根拠のひとつといえそうです。
腰椎分離症に伴う疼痛や機能障害、骨癒合に対するLIPUSの効果
そもそもなんですが、腰椎分離症に対するLIPUSの効果を調べた一次研究が少ないというのはあります。
調べ方の問題もあるとは思いますが、PubMedで見つけられたのが上述のTsukadaら(2019)の研究を含めて3件って感じでした。
なのでまとめて見てみようと思います。
まずはこちら。2017年に発表された研究8です。

この研究では、進行期の腰椎分離症所見(明らかな骨性のgappingを認め、さらにT2WI MRIでの高信号変化を呈する例)を示す13人の10代男女を対象に、通常の保存療法にLIPUSを加える/加えないで骨癒合に変化を及ぼすかが調べられました。
その結果、少なくとも5ヶ月以内に癒合が完了した症例数は、対照群で1例であったのに対してLIPUSを併用した群では6例と、LIPUS群で有意に高い癒合率を示したことが明らかになっています。
サンプルサイズの少なさやフォローアップ期間という観点での制限はあるものの、少なくとも進行期の腰椎分離症に対してはLIPUSによって骨癒合が促進される可能性があることを示唆しています。
続いては、Tanveerらによる2022年の研究9を参照してみます。
この研究では、早期の腰椎分離症を呈する34人の男女に、通常の保存療法に加えてLIPUSを追加することで12・20週後の疼痛(NRS)・機能障害(ODI)にどのような影響を与えるかが調べられました。
その結果、疼痛・機能障害の両アウトカムで、ベースラインと比較すると12・20週時点でLIPUS群では有意な改善が見られたとともに、従来の保存療法群(RPT group)と比較しても有意な改善が見られたことが示されています。

したがって、心身機能・身体構造の障害という観点からもLIPUSの併用は有用かもしれません。
ただ、この研究では何をもって「早期の腰椎分離症」としたのか、inclusion criteriaが明確に示されていないという問題点があります。
今回のまとめ(私見も交えつつ)
限られたエビデンスからは、従来のリハビリテーションにLIPUSを併用することで、特に早期〜進行期の青少年の腰椎分離症に対してポジティブな影響を与える可能性が示唆されました。
それ以外にも、211例を対象として後ろ向きにレビューしたChoiらの研究でも、骨刺激装置を使うことでCT上での骨癒合率が大きく向上していたことが示されています10。
ただ、おそらく現行では保険請求の観点で少しハードルがある?のかもしれないですね。。
とはいえ、物理療法はあくまで補助的なものであって、結局のところ腰椎分離症の本態が基本的にはオーバーストレスによるものであることを考えれば、オーバーストレスになってしまった要因に対してアプローチが必要になるわけです。
結局は身体活動で生じた問題は身体活動を直さなければ再発してしまいますし、特に腰椎分離症に関しては一度なってしまうとかなり長い戦いになるので、なんとしても再発は避けたいところです。
References
- Wall J, Cook DL, Meehan WP 3rd, Wilson F. Adolescent athlete low back pain diagnoses, characteristics, and management: A retrospective chart review. J Sci Med Sport. 2024;27(9):618-623. doi:10.1016/j.jsams.2024.05.004 ↩︎
- Andres LM, Skaggs DL. Spine issues in skeletally immature athletes. In DeLee J, Drez D, Miller MD, Thompson SR, eds. DeLee, Drez, & Miller’s Orthopaedic Sports Medicine: Principles and Practice. 5th edition. Elsevier; 2020. ↩︎
- El Rassi G, Takemitsu M, Glutting J, Shah SA. Effect of sports modification on clinical outcome in children and adolescent athletes with symptomatic lumbar spondylolysis. Am J Phys Med Rehabil. 2013;92(12):1070-1074. doi:10.1097/PHM.0b013e318296da7e ↩︎
- Selhorst M, Fischer A, Graft K, et al. Timing of Physical Therapy Referral in Adolescent Athletes With Acute Spondylolysis: A Retrospective Chart Review. Clin J Sport Med. 2017;27(3):296-301. doi:10.1097/JSM.0000000000000334 ↩︎
- Rutten S, van den Bekerom MPJ, Sierevelt IN, Nolte PA. Enhancement of Bone-Healing by Low-Intensity Pulsed Ultrasound: A Systematic Review. JBJS Rev. 2016;4(3):e6. doi:10.2106/JBJS.RVW.O.00027 ↩︎
- Palanisamy P, Alam M, Li S, Chow SKH, Zheng YP. Low-Intensity Pulsed Ultrasound Stimulation for Bone Fractures Healing: A Review. J Ultrasound Med. 2022;41(3):547-563. doi:10.1002/jum.15738 ↩︎
- Tsukada M, Takiuchi T, Watanabe K. Low-intensity pulsed ultrasound for early-stage lumbar spondylolysis in young athletes. Clin J Sport Med. 2019;29(4):262-266. doi:10.1097/JSM.0000000000000531 ↩︎
- Arima H, Suzuki Y, Togawa D, Mihara Y, Murata H, Matsuyama Y. Low-intensity pulsed ultrasound is effective for progressive-stage lumbar spondylolysis with MRI high-signal change. Eur Spine J. 2017;26(12):3122-3128. doi:10.1007/s00586-017-5081-z ↩︎
- Tanveer F, Arslan SA, Darain H, Ahmad A, Gilani SA, Hanif A. Effects of low-intensity pulsed ultrasound on pain and functional disability in patients with early-stage lumbar spondylolysis: A randomized controlled trial. J Bodyw Mov Ther. 2022;30:125-131. doi:10.1016/j.jbmt.2022.02.025 ↩︎
- Choi JH, Ochoa JK, Lubinus A, Timon S, Lee YP, Bhatia NN. Management of lumbar spondylolysis in the adolescent athlete: a review of over 200 cases. Spine J. 2022;22(10):1628-1633. doi:10.1016/j.spinee.2022.04.011 ↩︎



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