トピックレビューリハビリテーション膝部

#10 ジャンパー膝(膝蓋腱障害)のリハビリ、何をする?

トピックレビュー

膝蓋腱障害patellar tendinopathyは「ジャンパー膝(ジャンパーズニー)」とも呼ばれ、その名の通りextensor mechanism(膝伸展機構)のうち、特に膝蓋腱patellar tendonの慢性的な機能不全や退行変性が生じた状態のものを指すとされます(Bessette et al., 2020)。

この背景にある病態生理学的知見としては様々なものが提案されていますが、特に慢性的な腱の過負荷が腱の微小外傷をもたらし、それが個々の線維の変性を引き起こすというものが一般的に提唱されている理論のようです(Schwartz et al., 2015)。

膝蓋腱障害のリハビリを行った当事者であれば納得できるかもしれませんが、この障害は非常に時間がかかるうえ、不良なマネジメントはしばしば予後の不良をもたらします(Malliaras et al., 2015)。

このような膝蓋腱障害のマネジメントにおいては、基本的に運動療法を中心とした非観血的治療が主流であり(Schwartz et al., 2015)、PRPなどの侵襲的介入はそれらが奏功しない場合に有用であろう、と結論づけられています(Challoumas et al., 2021)。

今回はそのような膝蓋腱障害のリハビリテーションについて、「どのようなエクササイズを行えば良いのか?」という点について、文献を確認しながら整理していきます。

膝蓋腱障害とジャンパー膝は同義ではない、という指摘もありますが*、ここではわかりやすさのために同じ傷害像として併記しています。

*Sprague A et al. J Orthop Sports Phys Ther. 2020;49(9):627-630.

エキセントリックトレーニング

膝蓋腱障害のリハビリテーションに関する研究の多くはデクラインスクワットdecline squatと呼ばれるエキセントリックエクササイズを用いた介入をしています(Challoumas et al., 2021)。

このエクササイズは通常、下降フェーズ(エキセントリック相)を片脚で行い、挙上フェーズ(コンセントリック相)を両脚で行うことが一般的であるとされます(Malliaras et al., 2015)。

腱障害に対してエキセントリックな刺激がどのように作用するのか、その全貌は明らかになっていないものの、腱におけるコラーゲン線維の合成を刺激することや腱細胞周囲の血流が増加することが背景にあると考えられています(Gilhem et al., 2010)。

したがって、退行変性した腱を組織的に回復させるアプローチである可能性があるということですが、これが果たしてエキセントリックな負荷でのみ生じる反応なのかについては疑問が残ります。

しかし、現在の考え方として、介入の推奨度としてはStrength of Recommendation: Aと、エキセントリックなエクササイズは強く推奨されています(Rosen et al., 2022)。

介入における考慮事項

具体的なプロトコルとしては、例えばデクラインスクワットの他にも膝の伸展を伴って大腿四頭筋の収縮が入るエクササイズであれば代用が利きます。レッグプレスもマシンがあれば有用だと思います。

基本的に、膝蓋腱障害に対するエクササイズにおいては、実施中の疼痛はある程度許容し、その後の疼痛の変化を適切に追跡することが重要であるとされています(Malliaras et al., 2015)。
筆者自身は、

  • 実施時の疼痛はどうか?
    →NRS(10段階スケール)で4より大きければその日は中止、4以下なら許容
  • 実施した翌日の朝の疼痛は増悪していないか?
    →増悪していれば次は負荷を減らす、エクササイズ前と同程度まで戻っていればプログレッション

という基準でトレーニングを進めています。

また、腱障害のマネジメントとしてレジスタンストレーニングを行う場合、動作のテンポもきちんと指導する必要があります。これは動作速度が速くなると腱へのストレスが高まるためであり(Earp et al., 2016)、したがってまずは意識的にゆっくりなテンポでエクササイズを行っていき、プログレッションのための変数の1つとして少しずつ速度を上げていくのが良いと考えます。

回数については様々ではありますが、デクラインスクワットの例では3 x 15などが代表的な変数設定のようです(Young et al., 2005)。これについては実施するエクササイズや扱う負荷によって変わると思います。

progressive tendon-loading exercise(PTLE)

progressive tendon-loading exercise(日本語訳はあるんでしょうか?)は、Bredaらの研究で紹介されたプロコトルです。

PubMed link

上述したエキセントリックなトレーニングは「疼痛誘発型の」pain-provokingプロトコルであり、そして特にシーズン中のアスリートにおいては疼痛や機能的スコアといったアウトカムに対する効果が弱いという点から考慮されたプロトコルになります。

このプロトコルではエキセントリックな収縮のみを利用するということはなく、等尺性→等張性→爆発的収縮様式といった形式で段階的に腱に負荷をかけていくことが特徴として挙げられます。

ここでは上述したBredaらの研究で実際に行われたPTLEのプロトコルについて概観していきます。
なお、詳細はこちらのページにあるSupplementary Dataから確認することができますので、詳細はそちらを参照してください。

PTLE:ステージ1

ステージ1では等尺性収縮が利用されます。
実施の方法はレッグプレスマシンやレッグエクステンションマシンを用いて、患側の膝を60度程度屈曲位で45秒キープ×5回などが用いられます。

これらの機械が利用出来ない場合、患側のみでのウォールスクワットで代用できます。

これらのエクササイズを1週間で3回実施します。このプロトコル中の疼痛が3/10以下であり、かつシングルレッグスクワットで誘発される疼痛も3/10以下となれば次のステージへ進みます。

PTLE:ステージ2

ステージ2では等張性収縮が利用されます。
ここでもレッグプレスやレッグエクステンションマシンを用います。まずは10〜60°屈曲の間で行い、段階的に負荷を上げながら最終的に90度屈曲位まで行えるようにします。

これらの機械が利用出来ない場合、ウォーキングランジやステップアップで代用します。

これらのエクササイズを1週間で3回実施しながら、前述のステージ1のプロトコルも残りの4日間で実施します。
次のステージに進むクライテリアは、ステージ1と同条件に加えて、健側と患側で同程度の筋力発揮が可能、または体重の1.0~1.5倍の重さでレッグプレスを4セット×6回行えることになります。

PTLE:ステージ3

ステージ3では爆発的な動作が利用されます。
2日おきにジャンプスクワット、スプリットジャンプスクワット、ボックスジャンプ、インターバルランとジグザグランニングを行います。

ステージ1やステージ2のエクササイズも定期的に行います。

1週間疼痛が3/10以下で実施でき、シングルレッグスクワットでも疼痛が3/10以下であれば次のステージに進みます。

PTLE:ステージ4

この段階では競技特異的なトレーニングが行われます。
まずは個人スキルの練習から始め、それが疼痛誘発なくできるようになれば集団での練習に参加していきます。

ステージ2のトレーニングも最低週2回は実施します。

アイソメトリックエクササイズ

この方法は、リハビリテーションとして強化を行うというよりはむしろ「治療的な」側面があると考えられます(Lim & Wong, 2018)。

アイソメトリックな収縮によって膝蓋腱障害による疼痛を「緩和」することができることを示した研究として最も一般的なものが、Rioらによるクロスオーバー試験です(Rio et al., 2015)。

PubMed Link

この研究では膝蓋腱に疼痛を有する男性バレーボール選手を対象に、

  • 四頭筋のアイソメトリック収縮(70%MVC、膝60度屈曲位で45秒キープ)
  • 等張性収縮(8RMでレッグエクステンションを4×8)

の2群で、介入直後の疼痛変化の程度の差が調べられています。

その結果、前者では疼痛減弱が大きく生じ、それが45分後にも持続していたのに対し、後者ではそうはならなかったことが示されました。

2群でのNRSの変化を示した図。Post 1は介入直後、Post 2は介入から45分後のデータを指す。
図はRio et al. (2015)より。

その後の研究では相反する結果が示されており(Holden et al., 2020)、腱障害全般に対するアイソメトリック収縮の効果に関するシステマティックレビューでも「腱障害のマネジメント戦略としての等尺性収縮が、等張性収縮より優れていることを示すエビデンスはない」と結論づけられています(Clifford et al.,, 2020)。

おそらく同レビューで指摘されている通り、このモダリティに対する反応は個人差があると考えられます。(個人的な経験としてはウォーミングアップの一環として組み込むと疼痛が軽快するという選手が多かったです……)

特にシーズン中の膝蓋腱障害のマネジメントとしては選択肢の1つになるかもしれないですが、その効果については事前に練習の時などに確認しておくのが良いかと思われます。

今回のまとめ

結論としては、どの方法が最も優れているかという点を結論づけることはできないと思います。
しかし繰り返すように膝蓋腱障害のマネジメントとしては絶対的な安静よりも、強い疼痛をもたらす運動への参加を抑えつつ段階的にトレーニングをしていく方が良い転帰をもたらします。

痛むから冷やす、ただストレッチする、といった方法だけでなく、今回紹介したような方法を用いながら「腱を強化する」という視点を持てるようにしたいですね。

後記

今回の内容を書くにあたって、以下の本は非常に参考になりました。

この本は一般的な部位別・傷害別にアプローチを記載するのではなく、まず「組織」別にアプローチを考えよう、ということを提案しています。
つまり筋の傷害、腱の傷害、靭帯の傷害、といったようにアプローチの基本原理を考えていくというわけです。

この考え方は良いですね。「この部位の時はこういうアプローチ」という考え方が縦串であるとすれば、上記のような考え方は横串であって決して相反する考え方ではないと思いますし、より多角的に傷害像を理解できるようになるのではないかと思いました。

References

  • Bessette M, Toftoy D, Parker RD, Frank RM. Extensor Mechanism Injuries. In Miller MD, Thompson SR. DeLee, Drez, & Miller’s Orthopaedic sports medicine: principles and practice. 5th eds. Elsevier;2020
  • Challoumas D, Pedret C, Biddle M, et al. Management of patellar tendinopathy: a systematic review and network meta-analysis of randomised studies. BMJ Open Sport Exerc Med. 2021;7(4):e001110. Published 2021 Nov 29. doi:10.1136/bmjsem-2021-001110
  • Clifford C, Challoumas D, Paul L, Syme G, Millar NL. Effectiveness of isometric exercise in the management of tendinopathy: a systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000760. Published 2020 Aug 4. doi:10.1136/bmjsem-2020-000760
  • Earp JE, Newton RU, Cormie P, Blazevich AJ. Faster Movement Speed Results in Greater Tendon Strain during the Loaded Squat Exercise. Front Physiol. 2016;7:366. Published 2016 Aug 31. doi:10.3389/fphys.2016.00366
  • Guilhem G, Cornu C, Guével A. Neuromuscular and muscle-tendon system adaptations to isotonic and isokinetic eccentric exercise. Ann Phys Rehabil Med. 2010;53(5):319-341. doi:10.1016/j.rehab.2010.04.003
  • Holden S, Lyng K, Graven-Nielsen T, et al. Isometric exercise and pain in patellar tendinopathy: A randomized crossover trial. J Sci Med Sport. 2020;23(3):208-214. doi:10.1016/j.jsams.2019.09.015
  • Lim HY, Wong SH. Effects of isometric, eccentric, or heavy slow resistance exercises on pain and function in individuals with patellar tendinopathy: A systematic review. Physiother Res Int. 2018;23(4):e1721. doi:10.1002/pri.1721
  • Malliaras P, Cook J, Purdam C, Rio E. Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(11):887-898. doi:10.2519/jospt.2015.5987
  • Rio E, Kidgell D, Purdam C, et al. Isometric exercise induces analgesia and reduces inhibition in patellar tendinopathy. Br J Sports Med. 2015;49(19):1277-1283. doi:10.1136/bjsports-2014-094386
  • Rosen AB, Wellsandt E, Nicola M, Tao MA. Clinical Management of Patellar Tendinopathy. J Athl Train. 2022;57(7):621-631. doi:10.4085/1062-6050-0049.21
  • Schwartz A, Watson JN, Hutchinson MR. Patellar Tendinopathy. Sports Health. 2015;7(5):415-420. doi:10.1177/1941738114568775
  • Young MA, Cook JL, Purdam CR, Kiss ZS, Alfredson H. Eccentric decline squat protocol offers superior results at 12 months compared with traditional eccentric protocol for patellar tendinopathy in volleyball players. Br J Sports Med. 2005;39(2):102-105. doi:10.1136/bjsm.2003.010587

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