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【専門書レビュー#3】メイトランド 脊椎マニピュレーション 原著第7版

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「徒手療法もちゃんと体系的に勉強しておきたいんですよね」と職場の理学療法士の上司と話していたら、「オーストラリアンアプローチは結構いろんな徒手療法の基盤になってるとこ多いから読んでおくと良いよ」と言われたので読み始めたこの本。

メイトランドコンセプト

いわゆる「メイトランドコンセプト」と呼ばれる概念に関連する書籍ではありますが、一通り読んでみると確かに現場で通用する内容も多いなーと思ったので、軽く紹介したいと思います。

※ちなみに末梢関節に関する書籍もあるのですが、そちらはまだ未読。

【本の情報】
Maitland G, Hengeveld E, Banks K, English K. 赤坂清和, 齋藤昭彦,監訳 メイトランド 脊椎マニピュレーション.原著第7版. エルゼビア・ジャパン; 2008

ページ数:467

ボリューム:★★☆☆☆(文字が多いのでページ数からは考えられないほど多い)
読みやすさ:★☆☆☆☆(章にもよるが、全体的に言い回しなどが複雑)
内容の平易さ:★★☆☆☆
文献情報:★★★☆☆
臨床的有用性:★★★★☆(特に脊椎の病理という観点からも有用か)

【こんな人にオススメ】
ある程度根気強く勉強出来る人、脊椎の理学療法に興味がある人
「ぜひ学生に知っておいて欲しいんだよ」という内容も多い、しかしこれを読んで完全に理解できる学生がこの世にどれだけ存在するのかという問題……。

本の構成

この本は全部で15章と5つの付録から構成されています。章立てをざっと眺めるとこんな感じです。

  1. はじめに
  2. 診断と徒手理学療法への紹介における医師への役割
  3. コミュニケーション
  4. 評価
  5. 予後予測
  6. 検査
  7. 手技の原則
  8. 手技の選択
  9. 手技の適用
  10. 頸椎
  11. 胸椎
  12. 腰椎
  13. 仙腸関節領域:仙腸関節、恥骨結合
  14. 仙尾骨、尾骨間の領域
  15. ケーススタディ

付録1:ムーブメントダイアグラムの理論と作成
付録2:ムーブメントダイアグラムの臨床例
付録3:詳細な評価とムーブメントダイアグラム
付録4:臨床的なヒント
付録5:動物に対する理学療法

コンセプトを学ぶ上での大きな根幹となるところは4〜6、そして7〜9でしょうか。
個人的には3章の「コミュニケーション」の話も興味深く、またおそらく筆者らとしてもこの章はかなり重視すべき要素であると考えているようです。

全体の構成としては、全体として字は小さく、比較的ページ数から想像される以上の情報量があると考えて良いです。

特に文字オンリーのページは読むのにかなり骨がいる

後半の頸椎〜仙尾骨、尾骨間の領域までくると写真もかなり多くなるので読みやすいです。
体感としては、理解するまでに要するコスト(時間的・精神的・体力的)という観点で言えば9章までで全体の8割を占めているように感じました。

本の内容

内容としては1回読んだだけでは理解できない部分も多い

この本はもともとはMaitland’s Vertebral Manipulation(Elsevier; 2005)を翻訳したものであるからなのでしょうか、とにかく言い回しや表現がどうしても難解で日本語のレベルで理解が困難になるところも多々あります。(多分原文自体も言い回しが難しいなどがあると思いますが)

これは特に話が抽象的な3〜5章あたりで顕著で、個人的には3章の「コミュニケーション」のセクションが最も苦戦しました。。

いかんせん圧倒的な文字数の暴力、そして若干の読みづらさを感じる表現が多いという点で、正直これを読んで少なくとも理論の部分だけでも理解しようとするのはかなり難解だと感じました。

内容で個人的にもう一つ気になったところが、専門用語の訳出です。
例えば腰椎の屈曲検査に関する項目では次のような記述があります。

通常の腰部屈曲検査に2つの検査を加えることにより素早く状態を把握することができる。……いったん頸部屈曲が加えられれば、いかなる疼痛反応(腰椎、殿部、また下肢)の変化(注:通常の体幹前屈の動作に対する変化)は腰部椎間関節の運動の変化というよりも、むしろ脊柱管の疼痛過敏構造の運動に起因していると考えることができる……。

p. 320

多分文脈的に、椎間関節とこの部分で訳されているものはいわゆる”zygapophyseal joint”ではなくて”intervertebral joint”のことを指しているんだと思います。

同じようにこの「椎間関節」という表記で「ん?」となるところがあったような気がするので、おそらくこの辺が本文全体を通じて曖昧になっているように感じました。

ちなみに、『図解 解剖学事典 第3版』(p.78, 医学書院, 2013)ではこの点に関して厳密に分けられていて(当たり前ですが)、椎体と椎体の結合部は「椎間結合」intervertebral joint、関節突起間の結合部は「椎間関節」zygapophyseal jointと記載しています。

他の本だったら「結構重大なミスなので原著を買った方が良い」とか結論づけちゃいそうな問題点なんですが、いかんせんこの本は内容自体がかなりハードなので、果たして英語で読んでこの内容を理解できるか……と言われると微妙なんですよね。。。

特に脊椎の病理に関する内容は非常に参考になる

メイトランドコンセプトにおいては、検査や治療で用いた手技に対して患者がどのような反応を示すかという点を重視するとのことですが、これは患者の症状を引き起こしている病理的な要因を全く無視するというわけではありません。

少なくともこの著書の中では、手技を選択するために考えるべき点として次の3つを挙げています(p. 169)。

  1. 脊柱についての病理学的異常と損傷についての最近(最新の意?)の知識
  2. 診断
  3. 病歴、症状と徴候

したがって、脊柱の障害をもたらす病理に関しては比較的しっかりと書かれています(当然、記述自体は比較的古いのでその点は注意する必要がありますが)。

個人的に、これまでよく言われている「病理学的所見が必ずしも患者の症状と一貫しない」という知見が歪に解釈されてしまい、しばしば病理解剖学的知識の意義とは?となってしまうことがありました(正直)。

ただ、結局は特定の運動やストレスに対する患者の反応を確かめながら介入を進める考え方と、病理解剖学に基づいた介入の考え方はある種車の両輪みたいなものではないかと今は考えています。

この本を読んでおくと、おそらくは腰痛の病理についてもう少し詳しく書かれたMacnabの本なども理解しやすくなると思います。

手技以外の点でも参考になる点は多くある

手技以外でも、本書で書かれている内容は「脊椎の手技療法」という枠組みを超えて般化できそうなものがたくさんあります。

詳細の説明は割愛しますが、例えば

  • 表象的半透性障壁
  • 問診プロセスにおけるコミュニケーション
  • ムーブメントダイアグラム

などのコンセプトはメイトランドコンセプトの中核をなす概念ではありますが、日常的な現場での考え方にも応用できるものだと感じました。

また、推奨文献が本文中にちょくちょく出てくるのも嬉しいポイントです。
例えば日本語版がある本であれば、 David Butlerの『神経系モビライゼーション』は読んでおくべき本として推奨されています。

その他、McKenzieのMechanical Diagnosis and Therapyに関する理論(いわゆる「マッケンジー法」)に関しても理解が推奨されています。

まとめ・総評

本書はいわゆる手技のハウツー本ではなく、その手技の選択と意思決定に至るまでの過程を強く重視した内容になっています。

したがって、手早く明日使える手技を身につけるという目的で読み始めるとおそらく最初の数十ページで挫折してしまう可能性があります。
(前述したように、この本は日本語で書かれているにもかかわらず内容はかなり複雑で比較的難解、かつ膨大だと感じます)

というよりも、この本で書かれている治療手技は正直なところ至ってシンプルで、基本的には①椎骨の副運動を誘導するもの、②椎骨間での他動運動を誘導するもの、たまに③牽引の3パターン程度しかありません。
(もちろんその中にいくつかのバリエーションはあるのですが、何十種類とあるわけではないです)

したがって、
なぜ副運動(他動運動)を第一手技に選択したのか?
なぜその方向にモビライゼーションするのか?
なぜその強度なのか?
といった部分について、その決定プロセスを理解する必要があります。

本書では基礎的な手技を記載する。臨床では、これらの手技を基に多様な手技に発展させていくべきである。治療で用いられる手技は無数に存在する。本書に記載された手技は基礎的な手技であり、氷山の一角でしかないことを認識すべきである。

p.157

概してこの本は特に徒手療法に関して体系的に学んだことの無い人がじっくりと徒手療法について学び始めるのには良い本ではないかと思いました。

ただ1回読んだだけでは(正直僕の頭では)理解が難しかったので、何回か読み直して適宜自分でアウトプットして理解に努める必要があるとは思います。

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