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#13 Active Hip Abduction Test ~体幹の安定性を評価するテスト〜

トピックレビュー

「体幹の安定性」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。
そもそもこのフレーズはかなり曖昧な用語なので、個人的にはあまり使わないのですが。。

KIblerらは、「体幹の安定性」core stabilityについてその評価は動的かつ三平面について行われるべきであると指摘しています(1)
つまり、例えばプランクのような比較的静的なパターンで評価するのではなく、四肢の運動の中で体幹部を安定させられているかどうかを見るべきである、ということですね。

そのためのテストは複数の種類がありますが、今回は特にその中でもシンプルかつ多くの人に使いやすいであろうActive Hip Abduction Test(以下AHAbd)を紹介します。

テストの概要

AHAbdは、Nelson-Wongらによって考案された、長時間立位時の腰背部痛(LBP)発症リスクを評価するためのテストです(2)
Mageeによる成書(‘Orthopaedic Physical Assessment’)では、このテストは骨盤の静的・動的な安定性を評価するためのテスト例として紹介されています(3)

テスト手順

  • 患者は側臥位をとります。このときに肩-体幹部-骨盤-下肢が前額面から外れていないことを確認します。
  • 骨盤や下肢が前額面上から外れないように、自動でゆっくりと股関節の外転運動を行います。
AHAbdの開始肢位。肩から下肢にかけてが一直線上にあることを確認します。図はNelson-Wong et al. (2009)による。

評価項目

このテストでは、
①このタスクに対する患者の主観的な難度(主観的項目)
②検者から見たタスクのパフォーマンスレベル(客観的項目)
の2つを評価項目とします。

主観的項目は0〜5段階で評価し、0は全く難しくない、5は実施できないと定義します。
客観的項目は0〜3段階で評価し、主に骨盤の前額面上からの逸脱の程度などを確認します。

客観的項目におけるスコアリングの指標例。Nelson-Wong et al. (2009)を基に作成。

原著のSupplemental Materialのページに、0点と3点の映像があります。そちらも参照すると良いでしょう。

検査精度

原著では、LBPに対するスクリーニングとしては、主観的項目で4点、客観的項目で2点をカットオフ値にすることで、以下の精度でLBPを予測することができるとされます(2)

客観的項目主観的項目
感度0.410.35
特異度0.850.92
陽性尤度比2.684.59
陰性尤度比0.700.70
オッズ比3.856.55

DavisらはAHAbdについて、4点法の検者間信頼性は0.74、2点法(0〜1点を陰性、2〜3点を陽性とする方法)の検者間信頼性は0.59であったことを報告しています(4)

特にLBP患者と健常者を分けるという点では、Active SLRテスト(ASLR)を併用することでその精度を高めることができるかもしれません。
これについて、Nelson-Wongらはそれぞれ単独で用いた場合と併用した場合の検査精度について以下の通り報告しています(5)

AHAbdASLRCombi
感度0.740.630.89
特異度0.50.610.60
陽性尤度比1.51.622.22
陰性尤度比0.530.600.19
オッズ比2.82.712.0

この結果からは、特に2つの検査で共に異常が認められなかったときにLBPリスクを除外できるという観点で有効な可能性が示唆されます。

結果の解釈について

運動学的な背景

この検査の理論的背景には、LBP患者において特徴的な筋活動パターンがあります。
最も有名なものは、予測的な腹横筋活動の遅延や急激な摂動に対する腰部脊柱起立筋の活動減退などが挙げられます(6)

また、前額面上においては、LBPを有する患者では股関節外転筋群の筋力・筋持久力が低下しているとともに、持続的な立位保持に続発する左右中殿筋の共収縮が健常者に比べて大きくなることが指摘されています(7,8)

AHAbdに関する運動学的研究では、健常者であれば一貫して中殿筋の活動に先立った脊柱起立筋・内外腹斜筋の賦活が見られるのに対して、LBP患者ではそれらの筋群の活動遅延が生じることが示されています(9,10)

左AHAbdにおいて、中殿筋の活動開始のタイミングを0として、各体幹筋群がどの程度早く(上図マイナス値)、あるいは遅く(上図プラス値)賦活するかを示した図。
Ipsilat = 同側、Contralat = 対側、EO = 外腹斜筋 TrA/IO = 腹横筋と内腹斜筋、ES = 脊柱起立筋。
図は文献(10)による。

また、テストの左右差もLBPのリスクと関連する可能性が指摘されています。
これについて、Sorensenらは、LBP患者では左AHAbdの動作時における「腰椎-骨盤部の動き出し」が右AHAbdに比べて有意に早く生じ、また股関節外転角度も右に比べて左で有意に小さくなったことを報告しています(11)

AHAbdの動作中、まず骨盤に対する大腿骨の運動が生じ、それに続いて腰椎-骨盤がわずかに運動を起こします。LBP患者ではこの大腿骨の運動から骨盤までの運動の間の時間が、右AHAbdに比べて左AHAbdに比べて有意に短かったことが示されています。
図は文献(11)による。

解釈に関する私的な考え

このテストは簡便なテストですが、非常に多くの洞察を得ることができるのではないかと考えます。
例えば2点以上の指標である外転に伴う股関節の屈曲・内旋は、おそらく中殿筋の機能不全をTFL(大腿筋膜張筋)で代償する結果として生じていると考えられます。

特に上述した運動学的背景を考えた時に興味深いのは、代償的な骨盤の回旋ですね。
特に左AHAbdを実施したときに骨盤が早い段階で回旋してしまうのは、内腹斜筋の活動遅延も関連していると考えられます。
体幹に対する作用として、外腹斜筋は対側回旋、内腹斜筋は同側回旋というのは教科書的な定義ですが、体幹が固定された場合はそれぞれ骨盤の同側回旋と対側回旋に作用すると考えられます。

したがって、例えば左AHAbdにおいて右IOや左EOが先行して収縮しなければ、右EOの作用によって骨盤の右回旋(=骨盤が前方に倒れる)が生じる、というわけです。
これを想起させるようなデータが、実際にNelson-Wongらの研究では示されています(9)

左AHAbdにおける体幹筋活動動態を、LBP患者(赤)と健常者(緑)で比較したもの。上のものと同様に、中殿筋の筋活動開始時を0としており、それより早い活動をしていればマイナス値、遅い活動をしていればプラス値を示します。
図は文献(9)による。

上の図を見ると、健常者では右EOよりも先に右IOと左EOが活動するパターンを示す傾向が見られますが、LBP患者では右EOが最も早く収縮する傾向が見られます。

まとめ

Active Hip Abduction Testはあまり有名なテストではない気もしますが、ASLRと並んで簡単なテストで深く洞察することができるテストなので良いテストだなーと思います。

LBPのスクリーニングという点以外にも、ASLRと合わせて評価をすることで動的かつ多面的に骨盤〜体幹部の安定成について評価することができるのではないかと思います。

References

  1. Kibler WB, Press J, Sciascia A. The role of core stability in athletic function. Sports Med. 2006;36(3):189-198. doi:10.2165/00007256-200636030-00001
  2. Nelson-Wong E, Flynn T, Callaghan JP. Development of active hip abduction as a screening test for identifying occupational low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2009;39(9):649-657. doi:10.2519/jospt.2009.3093
  3. Magee DJ, Manske RC. Orthopedic Physical Assessment. 7th ed. Elsevier, Inc; 2020.
  4. Davis AM, Bridge P, Miller J, Nelson-Wong E. Interrater and Intrarater Reliability of the Active Hip Abduction Test. J Orthop Sports Phys Ther. 2011;41(12):953-960. doi:10.2519/jospt.2011.3684
  5. Nelson-Wong E, Gallant P, Alexander S, et al. Multiplanar lumbopelvic control in patients with low back pain: is multiplanar assessment better than single plane assessment in discriminating between patients and healthy controls? J Man Manip Ther. 2016;24(1):45-50. doi:10.1179/2042618614Y.0000000078
  6. van Dieën JH, Selen LP, Cholewicki J. Trunk muscle activation in low-back pain patients, an analysis of the literature. J Electromyogr Kinesiol. 2003;13(4):333-351. doi:10.1016/s1050-6411(03)00041-5
  7. Nelson-Wong E, Gregory DE, Winter DA, Callaghan JP. Gluteus medius muscle activation patterns as a predictor of low back pain during standing. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2008;23(5):545-553. doi:10.1016/j.clinbiomech.2008.01.002
  8. Marshall PWM, Patel H, Callaghan JP. Gluteus medius strength, endurance, and co-activation in the development of low back pain during prolonged standing. Hum Mov Sci. 2011;30(1):63-73. doi:10.1016/j.humov.2010.08.017
  9. Nelson-Wong E, Poupore K, Ingvalson S, et al. Neuromuscular strategies for lumbopelvic control during frontal and sagittal plane movement challenges differ between people with and without low back pain. J Electromyogr Kinesiol. 2013;23(6):1317-1324. doi:10.1016/j.jelekin.2013.08.011
  10. Suehiro T, Ishida H, Kobara K, Osaka H, Kurozumi C. Trunk muscle activation patterns during active hip abduction test during remission from recurrent low back pain: an observational study. BMC Musculoskelet Disord. 2021;22(1):671. Published 2021 Aug 9. doi:10.1186/s12891-021-04538-5
  11. Sorensen CJ, Johnson MB, Norton BJ, Callaghan JP, Van Dillen LR. Asymmetry of lumbopelvic movement patterns during active hip abduction is a risk factor for low back pain development during standing. Hum Mov Sci. 2016;50:38-46. doi:10.1016/j.humov.2016.10.003

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