トピックレビュー足関節・足部運動器評価

#14 オタワアンクルルールの結果をどう解釈するか

トピックレビュー

オタワアンクルルール (Ottawa Ankle Rules) は非常に有名なテストなので、おそらくアスレティックトレーナーの方で全く聞いたことないという人はあまり多くないと思います。

このような特殊な検査法(いわゆるスペシャルテスト)はアスレティックトレーニングの領域でも非常に多くの種類がありますが、それらについてはただ検査を実施できるだけでなく、結果をきちんと解釈できるかが重要になります。

今回はそのような観点からオタワアンクルルール(以下OAR)を掘り下げてみましょう。
知っている人からすれば当たり前の内容ばかりだとは思いますが、OAR以外の検査法に対しても応用できる考え方を入れたつもりです。

オタワアンクルルールの概要

検査の全体像

OARは骨の圧痛と荷重の可否についてを検査し、骨折の可能性を考慮してX線撮影をすべきかどうかを評価するテストです。

OARの概観。図はBachmann et al. (2003)による。

OARは以下に該当するときに、X線撮影が必要であると判断するものです。

  • 内外果の付近に疼痛があり、①内果 or/and 外果の先端〜後縁遠位6cmの圧痛、あるいは②受傷直後および救急外来で荷重不可が認められる場合、足関節骨折を疑いX線撮影が必要である。
  • 中足部に疼痛があり、①第5中足骨底あるいは/および舟状骨の圧痛、あるいは②受傷直後および救急外来で荷重不可が認められる場合、中足部の骨折を疑いX線撮影が必要である。

要するに、外果・内果の先端と、後縁を足底の方から6cm押して圧痛がないか、舟状骨・第5中足骨底の圧痛はないか、荷重はできるかどうか、というのがポイントになるわけですね。

歴史的な視点

歴史的な観点からいえば、OARは救急外来での足関節X線撮像コストを減らすための臨床予測ルールであったと言えます。
例えばSujitkumarらによる調査では、足関節の外傷2140件のうち明らかな骨折等を除いた1600件の約90%は軟部組織損傷であったことが示されています(Sujitkumar et al., 1986)。

現在(ましてや日本)ではルーチン的にX線を撮影しますが、コストを考えたら不要な画像は撮影する必要がないわけで、X線を撮影する前に「これは骨折ではない」とわかるのであればそのような不要なコストを削減することができます。

この点から考えられたのが、1992年にStiellらが発表した臨床予測ルールです(Stiell et al., 1992)。
ここでは足関節のX線は以下に当てはまる時にのみ必要であるとしたところ、感度100%、特異度40%の精度で足関節骨折を予測できたとしています。
足部についても、骨折を有していた患者は全員中足部の骨のいずれかに圧痛を有していたことから、それを触診にて確認することで感度100%の精度で足部骨折を除外できるとしています。

Stiellらによって考案された、足関節・足部のX線撮像を必要とするかどうかの臨床予測ルール。
図はStiell et al. (1992)による。

その後、同氏による改良版では、①足関節のルールについて55歳以上の項目を削除、②足部のルールについて立方骨圧痛を除外し、荷重の可否を追加するという調整によって、それぞれ特異度が高まったことが指摘されています(Stiell et al., 1993)。

この改良版が、いわゆる我々が知る「オタワアンクルルール」であり、その後の独立した施設による調査でも(すなわちルールに精通していない救急外来医およびトリアージナースが行っても)骨折に対する感度は100%であったことが明らかになっています(Pigman et al., 1994)。

「バッファロールール」の提案

OARに関連するルールとして「バッファロールール」があり、これはOARの足関節に関するルールで「骨後縁の触知」だったものを、「骨の触知」に修正したものです(Leddy et al., 1998)。

これは①骨付着部の靭帯の圧痛可能性を除外すること、②仮に骨折があるのであれば骨上でも同様に圧痛が認められること、を根拠としています。

これによって足関節骨折に対する感度は100%のままで特異度を59%に引き上げることができたと報告されています(Leddy et al., 1998)。

オタワアンクルルールの解釈について

検査精度

OARの検査精度に関する最も初期の研究はBachmannらによるシステマティックレビューであり、この研究ではあらゆる条件における検査精度(感度・特異度・陰性尤度比など)について報告がされています(Bachmann et al., 2003)。
これによれば、全39件についてプールされた感度・特異度はそれぞれ97.6(96.4-98.9)、31.5(23.8-44.4)、陰性尤度比は0.10(0.06-0.16)と報告されています。

その後にもOARの検査精度に関するシステマティックレビュー・メタ分析が発表されており(Barelds et al., 2017; Beckenkamp et al., 2017; Gomes et al., 2022)、いずれも高感度(~95%)を報告しています。

OARの除外基準として18歳未満が挙げられることもありますが(Jenkin et al., 2010)、小児に対するOAR適用に関する報告でも感度は98.5%と比較的良好な精度が報告されています(Dowling et al., 2009)。
ただし、小児での適用では特に成長板の骨折(Salter-Harris type I・IVなど)の見逃しが報告されていたほか、データが不足していることから6歳未満の適用については注意すべきであるとしています(Dowling et al., 2009; Runyon, 2009)。

OARの検査精度に関する要約

精度から考える検査の解釈

最初に注意すべきは、OARは「陰性だったときに非常に高い確率で骨折を除外することができる」のであって、「OARが陽性ならば骨折がある」とは言いがたい、ということです。

これについて少し考えてみます。

検査を適切に解釈するためには、まず検査結果が100%疾患の有無と対応しているわけではないということを理解する必要があります。
つまり、陰性ならその疾患がない、陽性ならその疾患があるという単純なものではなく、ほとんどの検査は必ずある程度の「モレ」が生じるというわけです。
その「モレ」がどの程度少なくなるかが検査精度であり、完璧な検査(すなわち感度も特異度も100%)に近ければ近いほどモレは少なくなります。

この「モレ」は偽陰性・偽陽性と呼ばれます。仮にOARが感度50%だったとすると、実際に足関節/足部の骨折をしている人にやったときには50人は陽性になり、残り50人は陰性になります(=実際には外傷があるのに「ない」=陰性と判定してしまう ⇒偽陰性)。

高感度であるということは、除外能力に優れているということ

ここで、感度とは「実際に傷害・疾患を有している人に行った時に陽性になる割合」と定義されます(Guyatt et al., 2015)。

極端な例としてOARが感度100%であると仮定すると、実際に骨折している患者にOARを行えば100%陽性になる、ということです。
これは、ランダムに抽出した100人に検査を行った時にOARが陽性であれば100%骨折がある、ということを意味するわけではありません。あくまで「骨折患者に対して行った時、……」という条件付き確率であることを理解する必要があります。

つまり、高感度の検査とは、実際に傷害があるのに傷害がないと「漏らす」可能性が低い検査であるというわけです。
したがって、そのような漏れの少ない検査で陰性ならば傷害はないのだろうと解釈することができるわけです。

ここまでの話をまとめるとセクションのタイトルの通りになります。
つまり、高感度の検査は疾患の除外に優れており、そのような検査で陰性であるならば疾患は無い可能性が高い、というわけです。

特異度が低いというのは、確定能力に劣るということ

一方、OARの特異度は~50%と低めです。
ここで、特異度とは「実際に傷害・疾患が無い人に行った時に陰性になる割合」と定義されます(Guyatt et al., 2015)。
OARの特異度を40%と仮定すると、「骨折がない患者にOARを行うと、40%陰性になる」というわけですね。
つまり、骨折がない患者100人に行うと、40人はきちんと陰性になり、60人は「骨折がないのに陽性としてしまう」、すなわち偽陽性となります。

特異度100%の検査は、「疾患が無い人100人に行うときちんと100人陰性になる」というわけであり、すなわち実際に傷害は無いにもかかわらず傷害があると「誤る」可能性が0%である、という検査であると解釈できます。
つまり、そのような検査で傷害が「有る」と判断された(=検査が陽性)ならばその傷害は必ずある、と判断ができるわけです。

特異度と疾患の有無の関係は、例えるならば探偵と犯人の関係のようなものである。
特異度100%の検査(=探偵)とは、犯人ではない人を「あなたが犯人だ」と指さす可能性が0%であるということであり、もしもその探偵が「あなたが犯人だ」と指さしたのであれば、その人が犯人である確率が100%である、ということになる。

まとめると、高特異度の検査とは疾患の確定に優れており、そのような検査で陽性ならば疾患のある可能性が高い、ということになります。

OARは特異度はおよそ40%であるので、骨折が無い人を「骨折があります!」と判断してしまう(=検査で陽性になってしまう)可能性が60%程度存在することになります。
なので、この検査で陽性であっても「骨折がある」と確定するには少し心もとないわけです。

このような感度・特異度と疾患の有無の関連はよくSpPIn, SnNOutという言葉で表現されます。

SpPIn = 高特異度(Specificity)の検査が陽性(Positive)なら、その疾患があると判断(rule In)できる

SnNOut = 高感度(Sensitivity)の検査が陰性(Negative)なら、その疾患を除外(rule Out)できる

OARに当てはめるのであれば、OAR陰性であれば骨折を除外できるが、仮に陽性であっても骨折があると確定できるわけではない、ということになります(特異度は高くないので)。

厳密には感度・特異度だけが検査の除外・確定に影響するわけではないですが、しかしこれは検査を解釈する上での指標のひとつとして良いと思います。

尤度比の考え方

最後に、OARについて陰性尤度比を紹介したのでそれについて簡単に説明しておきます。

尤度比とは、シンプルに考えれば「検査前の確率をどの程度変化させるか」の指標であるとすれば良いと思います。
一般的に陰性尤度比はどの程度減少させるか、陽性尤度比はどの程度増大させるか、の指標になります。

例えばOARの陰性尤度比は0.1程度ですが、尤度比が1未満であれば検査前の確率を減らし、1より大きければ検査前の確率を高めることになります。
例えばOARを行う前に「骨折の確率は15%くらいだろうな……」と考えたとすると、仮にOARが陰性であれば想定される骨折の確率は約1.7%になります(Bachmann et al., 2003)。

陰性尤度比が0.2未満であれば、検査前確率を非常に大きく減少させることができる有用な検査であるとみなされます(Prentice, 2017)。

尤度比の解釈と定義については別の記事をご参照いただければと思います。

まとめ

オタワアンクルルールは非常にシンプルな検査ですが、検査結果の解釈や選手への伝え方については十分注意する必要があります。

個人的には、OARが陰性であればよほど主観的に気になる要素がなければ病院受診を指示することはしませんが、陽性であった時にはリスク回避も兼ねて病院受診を指示することが多いです。

ただし、陽性の時には、「骨折の可能性がある」と伝えるのではなく、「骨折が無いと言い切れない」(から一応病院を受診しておこう)と伝えるようにしています。
その言葉のわずかな違いに大きな意味はないとは思いますが、可能な限り誠実でありたいですからね。

References

  • Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, Steurer J, ter Riet G. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. BMJ. 2003;326(7386):417. doi:10.1136/bmj.326.7386.417
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  • Beckenkamp PR, Lin CC, Macaskill P, Michaleff ZA, Maher CG, Moseley AM. Diagnostic accuracy of the Ottawa Ankle and Midfoot Rules: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2017;51(6):504-510. doi:10.1136/bjsports-2016-096858
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  • Prentice WE. Principles of athletic training: a guide to evidence-based clinical practice. 16th ed. McGraw-Hill;2017
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