スペシャルテスト骨盤部

仙腸関節障害のスクリーニングテスト

スペシャルテスト

腰背部痛(LBP)と仙腸関節障害は比較的高い割合で関連していることが明らかになっています。

そのため、LBPの要因を理解する上で仙腸関節の関与をスクリーニングすることが重要です。

スクリーニングとは「ふるい分け」のことであり、この場合は腰背部痛を訴える患者について仙腸関節の問題を考慮する必要があるかどうかをざっくりと見る、というイメージです。

これをどう解釈するかはひとまず置いておいて、まずはテストの中身について確認してみましょう。

Laslettのテストクラスター

仙腸関節障害を診断するために、Laslettら(1)が提唱したテストクラスターには以下の5つのテストがあります。

Distraction Test (Gapping Test)

distraction……引き離す、という意味です。ASISを引き離すからですねー。

【患者の肢位】背臥位

【操作】左右のASISを引き離すように外側・後方に向けて押す。

【陽性所見・解釈】一側の臀部や下腿後面に疼痛が生じればテスト陽性であり、前仙腸靭帯の損傷を示唆する。

検査者の手の圧で痛みを感じてしまうこともあるため、注意して行います。

Approximation Test (Compression Test)

approximation……近接、という意味です。その名の通り、腸骨を押して仙腸関節に圧縮ストレスを加えることが目的です。

【患者の肢位】側臥位

【操作】腸骨稜の付近をベッドに向かって押す。

【陽性所見・解釈】仙腸関節の圧変化(増加)を患者が感じればテスト陽性であり、仙腸関節の病変や後仙腸靱帯の損傷を示唆する。

Sacral Thrust Test

【患者の肢位】腹臥位

【操作】仙骨中心に手掌を当て、ベッドに向けて圧をかける。

【陽性所見】仙腸関節領域に疼痛が生じればテスト陽性とみなす。

圧を加える位置や方向については様々な方法があり、例えば仙骨尖に対して垂直に圧を加えると仙骨の前傾が生じることになります。
ただし、Laslettら(2003)ではこのテストの方法について以下のように記述しているため(2)、「仙骨中心」へ垂直に圧を加える、としました。

The examiner applies a force vertically downward to the centre of the sacrum.
(検査者は、仙骨の中心に対して垂直下向きの力を加える。)

Thigh Thrust Test

個人的には一番難しいテストです。

【患者の肢位】背臥位

【操作】

  1. 検査者は検査側のに立つ。
  2. その位置から、患者の検査側の股関節を他動的に90°屈曲させ、わずかに内転を入れる。
  3. 片方の手で仙腸関節を背側から触れながら、もう片方の腕を用いて大腿の長軸方向に平行に軸圧をかける。
  4. このテクニックを3〜6回、少しずつ速度を速めながら繰り返す。

【陽性所見・解釈】この操作で疼痛が生じる場合テスト陽性とみなす。

Gaenslen’s Test

ゲンスレンテストですね。これはおそらくテストクラスターの中で一番有名ではないでしょうか。

【患者の肢位】背臥位、または側臥位

【操作】
側臥位の場合: 検査側が上になるようにして、下側の脚の膝を抱えるようにして股関節を90°以上屈曲させる。
検査者は上側の骨盤を固定しながら、上側の大腿部を把持してその側の股関節を過伸展位にする。

背臥位の場合: 検査する側の脚がベッドから出るように位置取らせ、検査する側の股関節が過伸展位になれるようにする。反対側の脚は膝を抱えるようにして胸につける。
その肢位で、検査者は片方の手を用いて屈曲している側の脚をさらに胸に近づけるように屈曲させ、もう片方の手で過伸展させている脚をさらに地面に向けて押して過伸展を強める。

【陽性所見・解釈】
いずれの場合も、この操作によって疼痛が生じた場合にテスト陽性とみなす。

※ただし疼痛の原因は検査側の仙腸関節の障害以外にも、股関節、さらにはL4神経根の病変によっても引き起こされることがあります。

Mageeら(3)は、このテスト自体は側臥位で行うことが望ましいと指摘しています。
というのも、これは股関節の過伸展が重要になるため、必然的に側臥位の方が過伸展を作りやすいからでしょうね。

しかし、Laslettらはこのテストについては背臥位で行う方法を紹介しています(2)

検査精度に関するエビデンス

上述したテストは単独ではほとんど臨床的意義を持たず、複数組み合わせることで仙腸関節障害の鑑別能が高まると考えられています。

Laslettらによる原著(1)では、上述した5つ(実際はゲンスレンテストを左右で1つずつとみなしているため計6つ)のテストについて、陽性となったテストが2つ未満であると陰性尤度比が非常に小さくなることが示されています。

陽性数感度特異度陽性尤度比陰性尤度比
≥30.940.784.290.80
≥20.930.662.730.10
≥11.000.441.780.00
(0.00-0.46)

また、van der Wurffら(4)もこのようなテストクラスターについて調査しており、distraction, approximation, thigh thrust, FABER, Gaenslenの5つのテストのうち、3つが陽性であることを基準とすると、検査精度が最も高くなることを示しています。(この文献ではsacral thrust testは含まれていないということですね)

陽性数感度特異度陽性尤度比陰性尤度比
385.278.84.020.19
292.657.62.180.13
110042.41.740.00
01000.01.000.00

Petersenらによるシステマティックレビュー(5)では、上述した「Laslettルール」、すなわち上述した5つの検査のうち少なくとも3つが陽性であることを基準とすることを推奨しており、さらにこのルールに加えて症状のcentralization(腰痛などで生じる末梢の症状が減弱し、腰背部に近いところのみの症状が生じる現象)が生じないことも含むべきであるとしています。

Saueressigら(6)は、仙腸関節障害を鑑別するための疼痛誘発テストについて、その検査精度に関してメタ分析を行いました。
このメタ分析にはLaslettのテストクラスターだけではなく、その他にも多くのテストが含まれています。

このメタ分析の結果、このようなテストクラスターを用いることで、以下のような検査精度で仙腸関節障害の有無を鑑別することができるとしています。

感度特異度陽性尤度比陰性尤度比
0.83
(0.62-0.93)
0.59
(0.36-0.79)
2.13
(1.2-3.9)
0.33
(0.11-0.72)

この文献では文献間での高い異質性を示していることに注意する必要がありますが、しかしこのメタ分析では、以下のように要点を要約しています。

  • このようなテストクラスターが全体として陰性であれば、仙腸関節が痛みの原因であることを除外することができる(陰性尤度比が比較的低いため)
  • 一方で、テストクラスターが陽性であっても、それは仙腸関節が痛みの原因であると確定する根拠とはできない(陽性尤度比があまりにも低いため)

これはこのメタ分析だけではなく、上述した研究で示された精度を見ても明らかです。

基本的に陽性尤度比は5以上、陰性尤度比は0.2未満であれば臨床的に意義をもつとされていますから、それを考えても病変の確定にはまあ役立たないでしょう。

したがって、このようなテストを腰痛患者に行う場合、

陰性だから仙腸関節はとりあえず痛みの原因として考えなくても良い」のであって、

「陽性だから仙腸関節が原因だ!」とはならない、ということに注意する必要があります。

References

  1. Laslett M, Aprill CN, McDonald B, Young SB. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10(3):207-218. doi:10.1016/j.math.2005.01.003
  2. Laslett M, Young SB, Aprill CN, McDonald B. Diagnosing painful sacroiliac joints: A validity study of a McKenzie evaluation and sacroiliac provocation tests. Aust J Physiother. 2003;49(2):89-97. doi:10.1016/s0004-9514(14)60125-2
  3. Magee DJ, Manske RC. Orthopedic Physical Assessment. 7th ed. Elsevier, Inc; 2020
  4. van der Wurff P, Buijs EJ, Groen GJ. A multitest regimen of pain provocation tests as an aid to reduce unnecessary minimally invasive sacroiliac joint procedures. Arch Phys Med Rehabil. 2006;87(1):10-14. doi:10.1016/j.apmr.2005.09.023
  5. Petersen T, Laslett M, Juhl C. Clinical classification in low back pain: best-evidence diagnostic rules based on systematic reviews. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):188. Published 2017 May 12. doi:10.1186/s12891-017-1549-6
  6. Saueressig T, Owen PJ, Diemer F, Zebisch J, Belavy DL. Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(9):422-431. doi:10.2519/jospt.2021.10469

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