股関節・大腿部

THA術後に「脚が長い」と感じるのはなぜ?自覚的脚長差(PLLD)の原因・評価・リハビリ

THA術後に手術側の脚が長いと感じて困っている患者のイラスト 股関節・大腿部

以前、人工股関節全置換術(THA)後の画像評価について、2本ほど記事を書いてきました。

その中でも脚長に関して少し取りあげましたが、今回はその脚長について少し異なる視点について解説していきます。

THA術後には次のような問題にぶち当たることがしばしばあります。

「画像上はほとんど差がないのに、患者さんは『手術した脚が長い』と訴える」

この「患者さんが感じる脚長差」のことを、自覚的脚長差(perceived leg length discrepancy; PLLD)と呼びます。
今回はこのPLLDをテーマに、「なぜズレるのか」「何が問題なのか」「どうアプローチするか」を整理してみます。

この記事を読んで分かること

  • THA術後の構造的脚長差(SLLD),機能的脚長差(FLLD),自覚的脚長差(PLLD)の違い
  • 画像上の脚長差が小さくても「手術した脚が長い」と感じる理由
  • 骨盤傾斜,腰椎側屈可動性,股関節可動域・軟部組織とPLLDの関係
  • PLLDが歩行,身体機能,健康関連QOLに及ぼす影響
  • THA術後のPLLDに対する評価手順とリハビリの考え方

3つの脚長差:SLLD・FLLD・PLLD

話を進める前に、用語を整理しておきます。ここを混同すると議論がぐちゃぐちゃになるので、地味ですが大事です。

用語意味
SLLD(structural LLD/構造的脚長差)解剖学的に実際に骨の長さが違う
FLLD(functional LLD/機能的脚長差)骨の長さは同じでも、骨盤傾斜などアライメントの結果として生じる差
PLLD(perceived LLD/自覚的脚長差)患者さん本人が「違う」と感じている差

画像評価の記事で測っていたのはSLLDです。そして今回のテーマであるPLLDは、SLLDとは別物として扱う必要があります。

FLLDのイメージがつきにくいかもしれないので、ひとつ例を挙げます。
右股関節に内転拘縮がある人をイメージしてみます。
この人の右下肢を正中位に戻そうとすると、その分だけ骨盤が対側へ下制しますね(内転筋群の拘縮が生じているためです)。
そうすると、実際に脚の長さは変わっていないにもかかわらず、右下肢は骨盤が「持ち上がった」分だけ長く感じることになります。

股関節内転拘縮による骨盤傾斜によって,拘縮側下肢が相対的に長くなる機能的脚長差を示した模式図
もともとの(A)の状態では、立位を取っている時の脚の長さはAで同じになる。
しかし、これを無理やり正中位に戻すと対側に向けて骨盤が下制することになる。その結果、拘縮していた脚は骨盤が挙上したBの長さ分だけ長く感じることになり、結果的に脚長差が生じる。
図は”Orthopedic physical assessment” (7th edition)より。
Orthopedic Physical Assessment
Orthopedic Physical Assessment

THA術後の自覚的脚長差(PLLD)はどれくらい起きるのか

Wyldeら(2009)が股関節置換術後5〜8年の1114例を調査した研究では、約30%が脚長差を訴えていました。
また、Iversenら(2011)の一側primary THA 638例でも、術後6年時点で32%がPLLDを自覚しています。

だいたい3人に1人くらいと考えると、割合的には決してレアな訴えではないことがわかります。


構造的脚長差と自覚的脚長差は一致しない

Lazennecら(2018)の研究では、SLLD単独ではPLLDと有意な関連がない可能性が示されています。
つまり「骨の長さが実際に違うからそう感じている」とは限らない、ということです。

もちろんSLLDが全く無関係というわけでもなく、Mavčičら(2019)は臍果長(臍から内果までの脚長)に術後5mm以上の左右差があるとPLLDに関連すると報告しています。

また、一般的なコンセンサスとして、SLLDが1cm未満なら臨床的に大きな問題になりにくいとされます。

とはいえ全体として言えるのは、「画像で測った差」だけを見ていてもPLLDは説明できない、ということです。


PLLDに腰椎側屈可動性が関係する理由

PLLDの背景を探るうえで、おそらく最も重要な要素となるのが、腰椎骨盤部の可動性です。

なぜ側屈柔軟性が効くのか

Kogaら(2009)は、primary THA 59例を対象に、術後2年時点でPLLDを感じる人と感じない人の差を調べました。
その結果、術前に術側への骨盤傾斜があり、かつ腰椎の側屈柔軟性が低い症例では、術後のPLLDの程度が大きくなる傾向が観察されました。

例えば、右が術側の患者で右に骨盤が下制しているケースを考える(この骨盤の下制は、関節裂隙の狭小化など実際の脚短縮に対する代償的な反応であると解釈出来る。
このままでは身体重心が正中位に保てないので、腰椎の反対方向(すなわち左)への側屈の代償が生じる。
もしもこの左側屈の状態で「硬く」なってしまうと、術後にも骨盤を前額面上で正中位に戻せなくなるので、その結果として自覚的な脚長に差が生じることになる。
図はKoga et al. (2009)による。

さらにMinojiら(2026)は、一側primary THA 182例の後ろ向き検討で、胸腰椎全体の側屈可動域(ΔSPA)が小さいことがPLLDの独立した有意な予測因子であったと報告しています。

ΔSPA(spinopelvic angle)は、右側屈位・左側屈位での角度の和として計算される。
図はMinoji et al. (2026)による。

このように、(一応)画像レベルでも関連因子を見出すことができます。
(とはいえ、THA患者で脊椎前後像、しかも左右側屈可動域について撮るところがあるのかは微妙なので、その意味では実装可能性としては難しいかもしれないですが……)

骨盤傾斜、とくに「術後に残るもの」

先にも引用したLazennecら(2018)がPLLDに関連する因子として挙げたのは次の3つでした。

  1. 骨盤の傾斜(OR 1.06)
  2. 左右での膝屈曲拘縮・反張膝の差(OR 1.07)
  3. 脛骨高原中央から地面までの距離の左右差(OR 7.3)

なかでも骨盤傾斜(pelvic obliquity; PO)は、術後に残存しているものが重要とされます。Omichiら(2024)によれば、術側が下制するパターンでの術後POはPLLDと有意に関連し、カットオフ1.90°でAUC 0.883と比較的良好な精度でPLLDの有無を判別できたと報告されています。

となると、次の興味は「術後POの残存を規定する要因は何か?」ということになりますね。

これについて、Ozawaら(2024)は術後1年時点でPO≧2°が残存する独立因子として、年齢(OR 0.957)、術前のPO(OR 1.490)、腰椎の側屈角度(OR 0.848)を挙げています。

つまり、術前のPOが大きいほど術後も残りやすく、腰椎側屈角度が大きいほど残りにくいということです。


股関節側の因子:可動域と軟部組織

腰椎骨盤だけでなく、股関節側の因子も関わります。

Kinoshitaら(2021)は、剪断波エラストグラフィで評価した股関節外転筋群の弾性係数が、術後1ヶ月時点のPLLDの独立因子であったと報告しています。
外転筋の”硬さ”がPLLDに影響しうる、というわけです。

また川端ら(2024)は、静止立位時と歩行時のPLLDを分けて関連因子を調べており、これが実践的で面白い整理になっています。

静止立位時のPLLD歩行時のPLLD
術側の股関節内転可動域術側股関節内転可動域
術前の構造的脚長差術前の構造的脚長差
術後の構造的脚長差術後の構造的脚長差
術後の骨盤側方傾斜角術後の骨盤側方傾斜角
術前骨盤腔縦径
術側股関節伸展可動域

ポイントは、股関節内転可動域は立位・歩行どちらのPLLDにも関わる一方で、伸展可動域は歩行時のPLLDに特異的に関わっている点です。

なので、例えば脚の長さの違いを感じるといわれた時、「歩いているときと真っ直ぐ立っている時、どちらが強く感じますか?」と追加の質問をすることは有用なのかなと考えています。


自覚的脚長差が歩行・機能・QOLに及ぼす影響

PLLDはただの気のせいでは済まず、色々な問題をもたらします。

機能面では、Wyldeら(2009)でPLLD自覚者はOxford Hip Scoreが有意に低く、Iversenら(2011)でもHarris Hip Scoreが有意に低い傾向(OR 2.00)が示されています。

歩行面では、上述のIversenらの研究でPLLD自覚者は跛行の報告(OR 3.05)と歩行補助具の使用(OR 1.98)がいずれも有意に高くなっていました。

PLLDは多くが「術側が長い」と感じるパターンで、その場合は術側立脚期の膝屈曲や、非術側の伸び上がり歩行などが観察されます。ここで厄介なのが、歩行の異常がさらにPLLDの知覚を強めうるという点です。

flowchart TD
    A[股関節内転・伸展ROM制限] --> B[骨盤側方傾斜・FLLD]
    B --> C[PLLD]
    C --> D[術側荷重回避・膝屈曲・体幹側屈]
    D --> B

健康関連QOL(HRQoL)への影響についても、中野渡ら(2016)がパス解析で検討しており、FLLD → PLLD → HRQoL(とくに身体的側面)という影響の流れを示しています。

この「FLLD → PLLD → HRQOL」という流れは、臨床的に非常に示唆的です。
つまり、アウトカムを改善したいなら、介入すべきはFLLDの側面だということになります。

骨盤傾斜・腰椎側屈角・股関節内転(&伸展)角度、あたりが具体的なターゲットになるわけですね。


THA術後の自覚的脚長差をどう評価・介入するか

流れとしては、次のような順番で考えるのが整理しやすいと思います。

① まず「危ないもの」を除外する

最初にやるべきは、急激な変化がないかの確認です。

とくに「急に脚が短くなった感じがする」という訴えは、カップの脱転やインプラントの脱臼、ステム沈下、骨折などの可能性があります。

ここは迷わず医師に相談すべき場面です。

② SLLDの有無を確認する

次に画像で構造的な脚長を確認します(測り方は画像評価編を参照)。

コンセンサスとしては1cm以上のSLLDが臨床的に意味のある差とされます。

SLLDが大きくADLに著しい影響が出ている場合は、一度医師と方針を協議するのが望ましいでしょう。

③ FLLDにアプローチする

SLLDが問題になるレベルでなければ、いよいよFLLDです。ターゲットは、

  • 腰椎の側屈角度(とくに術側方向)
  • 骨盤の側方傾斜(とくに術側挙上/非術側下制の方向)
  • 股関節の内外転角度
  • 股関節外転筋群の伸張性

このあたりになります。

具体的なエクササイズについての示唆を得るにあたって、術後早期の運動療法がFLLD・PLLDの改善に有効であることを示したRCTがあります。

Nakanowatariら(2016)は、一側primary THA後の27名を対象に、

  • 特異的エクササイズ(SEA)または調整可能なヒールリフト(MHL)を行った群と、
  • 通常のリハビリのみの対照群を比較したところ、

SEA群・MHL群ともに、術後3週時点のFLLDが対照群より有意に低値でした。
またPLLDについても「全くない/わずかにある」と回答した患者が対照群より有意に多い結果でした。

この研究で行われたSEAの中身は、次の3つです。

  1. 脚延長のある側の股関節屈筋・外転筋群に対する等尺性収縮後弛緩手技
  2. side-shift exercise(立位で腰椎凹側への側方移動)
  3. hitch exercise(立位で、骨盤下制側の踵を持ち上げて骨盤水平位を保つ)
side-shift exercise(図c)とhitch exercise(図d)。図はMaruyama et al. (2008)より引用。


私見

PLLDは医療者からすると「痛み」とかに比べると地味な問題……のように気がしますが、患者さんによってはこれがかなり回復の障壁になるケースもあります。

「脚の長さは揃えてくれてるんですよね?なんで脚の長さが違うように感じるんですか?」と(ちょっと不満げに)聞かれることもよくあることなので、そのメカニズムについても十分に説明出来るようになっておく必要があります。
この時にも骨盤と大腿骨の模型があると説明に役立ちますね……。


参考文献

  • Iversen MD, Chudasama N, Losina E, Katz JN. Influence of self-reported limb length discrepancy on function and satisfaction 6 years after total hip replacement. J Geriatr Phys Ther. 2011;34(3):148-152. doi:10.1519/JPT.0b013e31820e16dc
  • Kinoshita K, Kimura K, Miyamoto S, et al. Relationship between Perceived Leg Length Discrepancy at One Month and Preoperative Hip Abductor Muscle Elasticity in Patients after Total Hip Arthroplasty. Phys Ther Res. 2021;24(3):232-239. Published 2021 Sep 3. doi:10.1298/ptr.E10102
  • Koga D, Jinno T, Okawa A, Morita S, Shinomiya K. The effect of preoperative lateral flexibility of the lumbar spine on perceived leg length discrepancy after total hip arthroplasty. J Med Dent Sci. 2009;56(1):69-77.
  • Lazennec JY, Folinais D, Florequin C, Pour AE. Does Patients’ Perception of Leg Length After Total Hip Arthroplasty Correlate With Anatomical Leg Length?. J Arthroplasty. 2018;33(5):1562-1566. doi:10.1016/j.arth.2017.12.004
  • Maruyama T, Takeshita K, Kitagawa T. Side-shift exercise and hitch exercise. Stud Health Technol Inform. 2008;135:246-249.
  • Mavčič B, Dolinar D, Pompe B, Antolič V. Patient-dependent risk factors for self-perceived leg length discrepancy after total hip arthroplasty. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2019;29(4):793-799. doi:10.1007/s00590-019-02389-4
  • Minoji S, Ishikura H, Kudo M, Hatano M, Nishiwaki T, Tanaka S. Perceived leg length discrepancy after total hip arthroplasty is associated with global spinopelvic coronal flexibility. Arch Orthop Trauma Surg. 2026;146(1):187. Published 2026 May 16. doi:10.1007/s00402-026-06344-x
  • Nakanowatari T PhD Pt, Suzukamo Y PhD, Izumi SI PhD Md. The Effectiveness of Specific Exercise Approach or Modifiable Heel Lift in the Treatment of Functional Leg Length Discrepancy in Early Post-surgery Inpatients after Total Hip Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial with a PROBE design. Phys Ther Res. 2016;19(1):39-49. Published 2016 Nov 29. doi:10.1298/ptr.e9892
  • Omichi Y, Goto T, Wada K, Tamaki Y, Hamada D, Sairyo K. Impact of the hip-spine relationship and patient-perceived leg length discrepancy after total hip arthroplasty: A retrospective study. J Orthop Sci. 2024;29(3):854-860. doi:10.1016/j.jos.2023.03.018
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  • Wylde V, Whitehouse SL, Taylor AH, Pattison GT, Bannister GC, Blom AW. Prevalence and functional impact of patient-perceived leg length discrepancy after hip replacement. Int Orthop. 2009;33(4):905-909. doi:10.1007/s00264-008-0563-6
    IF: 2.6 Q2
  • 川端悠士, 菊谷優紀子, 山下奈津美, 平田健司, 木村光浩. 人工股関節全置換術後早期における歩行時の自覚的脚長差に関連する因子. 運動器理学療法学. 2024;4(1):10-18. doi:10.57281/jofmpt.202321
  • 中野渡達哉, 鈴鴨よしみ, 神先秀人, 沖井明., 菅俊光, 出江紳一. 人工股関節置換術後の機能的脚長差が健康関連QOLに及ぼす影響. 理学療法学. 2016;43(1):30-37. doi:10.15063/rigaku.11058

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